本記事は公開されている研究・公的発表に基づく一般的な情報提供です。特定の治療効果を保証するものではなく、医学的助言に代わるものでもありません。数値の解釈や治療方針の判断は、必ず医師にご相談ください。

体重計の数字が3キロ減ったとしよう。それだけを見れば、順調な結果である。だが、その3キロの中身を尋ねられて、正確に答えられる人はほとんどいない。脂肪が3キロ減ったのか、それとも脂肪2.5キロと、筋肉を含む組織0.5キロが一緒に減ったのか。体重という一つの数字は、この違いを教えてくれない。

差は些末ではない。同じだけ体重を落としても、除脂肪量――筋肉や骨、水分など脂肪以外の組織の総称――がどこまで保たれたかによって、その後の体の使いやすさは変わってくる。それでも多くの人が毎日確かめているのは体重計の数字であり、体組成の内訳ではない。

除脂肪量が減ること自体は、珍しい現象ではない。体重を減らす取り組みの過程で、多かれ少なかれ起こる。問題は、それがどの程度で止まるか、そして何が歯止めになるかである。

この記事でわかること

  • 体重減少にともない脂肪量と除脂肪量はともに減るが、除脂肪量の占める割合は一定でなく、年齢や身体活動量、減量の速さ、運動の有無によって変動する。
  • レジスタンス運動を組み合わせると除脂肪量の減少は抑えられ、タンパク質摂取量を増やすと筋肉量の減少は防げるが、筋力や身体機能の低下までは防げないと報告されている。
  • 筋肉量だけでは日常動作の困難さを十分に予測できず、握力などの筋力指標が高いほど総死亡リスクが低いとの関連が報告されている。

体重が減るとき、脂肪と筋肉はどんな割合で減っているのか

減った体重のすべてが脂肪というわけではない。体重は大きく、脂肪組織である脂肪量と、それ以外の組織である除脂肪量――筋肉・骨・臓器・水分など――に分けられる。体重を減らす取り組みでは、この両方が同時に動く。

減量した体重のうち除脂肪組織が占める割合には、古くから目安とされてきた経験則がある。複数の減量研究を横断的に検証したレビューは、体重減少分のおよそ4分の1が除脂肪量によるものだとする、いわゆる「4分の1ルール」が長年引用され続けてきたことを指摘している。ただし同じレビューは、この割合を固定値として扱うことには慎重な立場をとる。実際の割合は年齢や身体活動量、減量の速さ、そして運動を取り入れているかどうかによって、大きく変動するという。

つまり、脂肪と除脂肪量がどんな比率で減るかは、あらかじめ決まった数字ではない。同じ体重減少でも、進み方次第で中身は変わる。

除脂肪量までいっしょに減ってしまうのはなぜか

除脂肪量が減る主な理由は、エネルギー不足が続くと、筋肉のタンパク質を合成する働きと分解する働きのバランスが、分解側に傾きやすくなるためである。体はエネルギーが足りないとき、主要な貯蔵エネルギーである脂肪だけでなく、筋肉に含まれるタンパク質も分解して利用しようとする。

この傾きの度合いは一定ではない。先のレビューは、除脂肪量が失われる程度を左右する要因として、加齢や身体活動の低さを挙げている。歳を重ねるほど、そして体を動かさないほど、除脂肪量は目減りしやすい方向に傾くというわけだ。逆に言えば、この傾きは体が自動的に受け入れるしかない結果ではなく、いくつかの要因によって変えられる余地があるということでもある。

その要因の一つが、運動である。

レジスタンス運動は除脂肪量の減少をどれくらい防げるのか

結論から言えば、負荷をかける運動を取り入れることで、除脂肪量の減少は大きく抑えられることが複数の研究で示されている。

高齢の肥満者を対象にした系統的レビューとメタ解析がある。複数のランダム化比較試験を統合したところ、食事制限にレジスタンス運動を組み合わせた群のほうが、食事制限のみの群に比べて除脂肪量の減少がはっきりと抑えられていた。同じ解析では、筋肉の質――同じ筋肉量あたりでどれだけ力を発揮できるか――についても、運動を組み合わせた群で改善する傾向が見られたという。

運動の種類や強度によって、効果は一様ではない。別の系統的レビューは、除脂肪量を保つことと体脂肪率そのものを落とすこととでは、有利に働く運動が異なると分析している。除脂肪量の維持については、有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせた中強度の混合トレーニングと、強度を問わないレジスタンス運動がもっとも効果的だった一方、体脂肪率の減少という点では、高強度の有酸素運動がもっとも大きな効果を示したという。保つ運動と、減らす運動は、同じではない。

この歯止めの効果は、減量の手段を問わない。食事療法によるものであれ、薬物治療によるものであれ、エネルギー収支をマイナスにする方法が何であっても、そこに運動を組み合わせるかどうかで体組成の変わり方は違ってくる。実際、GLP-1受容体作動薬の一種であるリラグルチドを用いた減量維持試験では、運動プログラムと薬物治療を併用した群のほうが、いずれかを単独で行った群よりも体脂肪率の下がり方が大きかったと報告されている。運動という要素が、減量の方法にかかわらず体組成の中身を左右しうることを示す一例である。

※ ここまでの内容は一般的な生理学の知見の紹介であり、特定の運動法を勧めるものではない。持病があって運動に制限がある人や、すでに何らかの治療を受けている人は、運動の種類や強度を自己判断せず、医師に相談したうえで取り組んでほしい。

タンパク質を増やせば筋肉は守られるのか

守られるものと、守られないものがある。

過体重・肥満のある成人を対象にした47件の研究、3000人超のデータを統合した系統的レビューとメタ解析によると、タンパク質摂取量を増やすことは、減量中の筋肉量の減少を防ぐ方向に働くと報告されている。同じ解析では、体重1kgあたり1.0gを下回るタンパク質摂取は筋肉量減少のリスクと関連し、1.3gを超える摂取では筋肉量の増加も期待できると分析されている。これは研究全体の平均的な傾向を示す数字であり、個々人に当てはめる際には食事内容や身体状況によって必要量が変わることに留意したい。

ここで見過ごせないのが、同じ解析が示したもう一つの結果である。タンパク質摂取を増やすことは、筋肉の「量」の減少は防いだが、筋力や身体機能――立ち上がる、歩く、握るといった動作の能力――の低下については、統計的に有意な予防効果が確認されなかったという。

量は守れても、機能は守れないことがある。

筋肉は「量」より「機能」で評価すべき理由

近年の学会コンセンサスでは、筋肉の量そのものよりも、その機能――握力や歩行速度に表れる筋力――のほうが、健康上の意味において重視されるようになっている。

肥満と筋肉減少(サルコペニア)が重なった状態を定義する欧州の学会による合同コンセンサスは、体組成測定でわかる筋肉量だけでは、日常動作の困難さを十分に予測できないと指摘している。そのうえで、筋肉量に加えて筋力そのものを測ることを、この状態を診断する条件に加えている。量が保たれていても、質や力が伴っていなければ、体の使いやすさには結びつかないということである。

筋力の重要性を裏づける手がかりもある。健康な集団を対象にした大規模な系統的レビューとメタ解析では、握力をはじめとする筋力の指標が高い群のほうが、低い群に比べて総死亡のリスクが低いという関連が、複数の追跡調査を通じて一貫して示されている。筋肉が多いかどうかより、その筋肉がどれだけ働くかのほうが、体にとって意味を持つ場面は多い。

だとすれば、タンパク質摂取だけで筋肉を守った気になるのは早計かもしれない。量を守る働きと、機能を守る働きは、必ずしも同じ手段で得られるとは限らない。レジスタンス運動が筋肉に負荷をかけ、神経と筋肉の連動そのものを使わせる介入である一方、タンパク質は合成の材料を補うにとどまる。量と機能、その両方を視野に入れるなら、この二つは補い合う関係にあると見るのが妥当だろう。

まとめ

冒頭の3キロに戻ろう。その中身が脂肪だけなのか、筋肉を含む除脂肪量まで削られているのかは、体重計の数字からは判断できない。減量に伴う除脂肪量の減少は、エネルギー不足という状況では避けがたく起こりうる現象だが、その程度は一定ではなく、レジスタンス運動やタンパク質摂取といった要素によって変わりうることが、複数の研究から見えてきている。

タンパク質は筋肉量の目減りを防ぐ助けにはなるが、筋力や身体機能まで守ってくれるとは限らない。その空白を埋めるのが、体に負荷をかける運動である。量を守る工夫と、機能を守る工夫は、別の役割を担っている。体重という一つの数字の裏側で何が起きているかを意識することが、次に何を選ぶかを考える出発点になる。


よくある質問

有酸素運動だけでも除脂肪量は保てますか?

運動の種類によって効果の出方は異なるとされている。エネルギー制限下での運動様式を比較した系統的レビューでは、有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせた中強度の混合トレーニングと、強度を問わないレジスタンス運動が除脂肪量の保持にもっとも有利である一方、体脂肪率の減少では高強度の有酸素運動が最も優れると報告されている。目的に応じて運動の種類や強度を考える余地があるといえる。

タンパク質は具体的に何をどれくらい摂ればいいですか?

研究全体の傾向としては、体重1kgあたり1.0gを下回ると筋肉量減少のリスクと関連し、1.3gを超えると筋肉量の増加も期待できると報告されている。ただしこれは研究データの平均的な傾向であり、腎機能をはじめとする個人の健康状態によって適切な摂取量は変わる。具体的な量は医師や管理栄養士に相談して決めることが望ましい。

高齢者でも同じことが言えますか?

高齢の肥満者を対象にした研究でも、レジスタンス運動を組み合わせることで除脂肪量の減少が抑えられたとする報告がある。むしろ加齢は除脂肪量が失われやすくなる要因の一つとされており、年齢を重ねた人ほど、運動を通じた歯止めの意味は大きくなる可能性がある。

体重さえ減れば、除脂肪量が多少減っても問題ないのでは?

一概にそうとは言い切れない。体組成の測定で筋肉量が保たれていても、筋力や身体機能まで保たれているとは限らないと指摘する研究がある。体重という一つの数字だけでなく、筋力や日常動作のしやすさにも目を向けることが、長期的な体の状態を考えるうえでは重要だとされている。

出典