本記事は公開されている研究・公的発表に基づく一般的な情報提供です。特定の治療効果を保証するものではなく、医学的助言に代わるものでもありません。数値の解釈や治療方針の判断は、必ず医師にご相談ください。

ホルモン変化の時期に入ってから、食事の内容や量を大きく変えたわけではないのに、体重や健診の血糖値が動き始めた――そう感じる人は少なくない。「気のせいではないか」「自分の生活習慣が悪いのではないか」と受け止めてしまいがちだが、この時期に体の中で起きている変化には、医学的に説明できる背景がある。

鍵になるのが、エストロゲンというホルモンの低下と、それに伴うインスリンの効きにくさ(インスリン抵抗性)の関係である。

この記事でわかること

  • インスリン抵抗性とは、細胞がインスリンの信号に反応しにくくなり、体が代償としてインスリン分泌を増やす状態を指す。
  • エストロゲンはインスリンの情報伝達経路を介して糖代謝を促進し、内臓脂肪の蓄積を抑える方向にも働くため、その低下は2つの経路からインスリン抵抗性を進めやすくする。
  • 動物実験ではエストラジオール補充によるインスリン感受性の改善が報告されているが、限定的な条件下の知見であり個人差も大きい。

インスリン抵抗性とは何か

インスリンは、血液中の糖(ブドウ糖)を筋肉や脂肪の細胞に取り込ませ、血糖値を下げる働きを持つホルモンである。インスリン抵抗性とは、この細胞側がインスリンの信号に反応しにくくなった状態を指す。細胞が反応しにくくなると、体は血糖値を一定に保とうとして、より多くのインスリンを分泌するようになる(代償性の高インスリン血症)。この代償が追いつかなくなると、血糖値そのものが上昇し始める。

エストロゲンとインスリンの効きやすさの関係

エストロゲンには、インスリンの情報伝達経路を介して糖代謝を促進する働きがあると報告されている。また、内臓脂肪の蓄積を抑える方向にも働くとされている。

ホルモン変化の時期に入り、エストロゲンの分泌が低下してくると、この2つの働きがともに弱まる。一つは、インスリンの効きやすさを支えていた働きそのものが弱まること。もう一つは、内臓脂肪が蓄積しやすくなることである。この2つが重なって、インスリン抵抗性が進みやすい状態になると考えられている。

内臓脂肪の増えやすさとインスリン抵抗性は、互いを強め合う

ここで見逃せないのは、内臓脂肪の増加とインスリン抵抗性が、一方通行の関係ではないという点である。内臓脂肪が増えるとインスリン抵抗性が進みやすくなる一方、インスリン抵抗性が進むと、体はさらに脂肪を蓄積しやすい状態になる。この2つが互いを強め合う関係にあることが、ホルモン変化の時期の体重管理を難しくしている一因と考えられている。

内臓脂肪が増えることは、血糖だけでなく中性脂肪などほかの代謝指標にも波及する。内臓脂肪と肝臓の脂肪代謝の関係については、関連記事でも扱っている通りである。

研究で示されていること・まだわかっていないこと

動物実験の段階では、食事誘発性の肥満を生じさせた閉経モデルの雌性げっ歯類においてエストラジオール(エストロゲンの一種)を補充することでインスリン感受性の低下が改善したとする報告が複数ある。ヒトを対象とした研究でも、大豆由来のイソフラボンの一種であるゲニステインを24週間投与した閉経後女性の群で、非投与群に比べて空腹時血糖・インスリン値が低下し、インスリン感受性が高まったとする報告がある。

ただし、これらは特定の成分の効果を保証するものではなく、限定的な条件下での研究報告である。個人差も大きく、そのままヒト全般に当てはめられるとは限らない。あくまで、エストロゲンとインスリン感受性の関係を裏づける研究の一例として紹介するものであり、特定の食品・サプリメントの摂取を推奨する趣旨ではない。


よくある質問

なぜホルモン変化の時期に血糖値が上がりやすくなるのですか?

エストロゲンの低下によって、インスリンの効きやすさを支えていた働きが弱まることと、内臓脂肪が蓄積しやすくなることが重なり、インスリン抵抗性が進みやすくなるためと考えられている。

インスリン抵抗性があると、必ず糖尿病になるのですか?

そうとは限らない。インスリン抵抗性は糖尿病のリスク要因の一つであり、進み方や体への影響には個人差が大きい。血糖値や他の検査項目とあわせて、医師による評価が必要な事項である。

食事や運動で改善できますか?

生活習慣の見直しがインスリン感受性に良い方向で働きうることは、一般的な研究知見として報告されている。ただし効果の現れ方には個人差があり、具体的な取り組み方は医師や専門家に相談することが勧められる。

婦人科と内科、どちらに相談すればよいですか?

ホルモン変化そのものは婦人科、血糖値や代謝指標は内科が専門領域になることが多いが、両者は関連し合っているため、どちらに相談してもよい。必要に応じて連携して評価されることが一般的である。


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