本記事は公開されている研究・公的発表に基づく一般的な情報提供です。特定の治療効果を保証するものではなく、医学的助言に代わるものでもありません。数値の解釈や治療方針の判断は、必ず医師にご相談ください。

「昔から晩酌はしているし、締めのラーメンも週末のご褒美」──それでも健診の中性脂肪の欄だけ赤字だった、という話は珍しくない。

食べる量を大きく変えたわけでもないのに、去年より数字が上がっている。心当たりはあるようで、はっきりしない。犯人を「食べすぎ」と決めつけると、たいてい本当の要因を取り逃がす。

中性脂肪を押し上げている主な要因は、お酒そのものと、そのあとの締めの糖質が重なる夜の習慣にあると考えられている。

理由はひとつ。アルコールは肝臓で中性脂肪の材料づくりを増やし、締めの糖質はその材料をさらに補充する。夜のあいだ、肝臓は二重に働かされているということだ。

この記事でわかること

  • アルコールは肝臓での脂肪酸燃焼を抑える一方、中性脂肪の合成とVLDL分泌を増やすため、飲んだ量が多いほど中性脂肪が上がりやすい。
  • 純アルコール量(摂取量ml×度数÷100×0.8)で計算すると、男性は1日40g以上(ビールロング缶2缶相当)で生活習慣病リスクが高まる目安とされる。
  • 少量〜中等量の飲酒者で中性脂肪が低い傾向が報告される一方、少量でもリスクが上がる病気があるため、量が増えるほど中性脂肪が上がりやすいという関係の方が重要である。

お酒がTGを押し上げる仕組み

「晩酌はほどほどのつもり」なのに、中性脂肪だけ基準を超える。決して珍しいことではない。ほどほど、という感覚がずれているのか。それとも、量そのものより、飲んだあと肝臓で起きることのほうが効いているのか。研究が示すのは、その両方である。

アルコールは肝臓でのVLDL産生を増やす

アルコール(エタノール)が肝臓に入ると、まず脂肪酸を燃やす働きが一時的に後回しにされる。燃やすはずのものが、燃えない。行き場を失った材料は、中性脂肪の合成と、それを血中へ運ぶVLDL(中性脂肪を運搬する粒子)の分泌に回されると考えられている。だから影響は、飲んだ夜だけでは終わらない。翌朝の採血にまで尾を引きやすいのは、このためである。

一度に多く飲むと急性に数値が上がる

量そのものの問題も、無視はできない。ある研究では、純アルコール量にしておよそ50gを超える量を一度に摂取すると、健常な人でも一過性に血中の中性脂肪が上がることが報告されている。「今日は飲みすぎた」と自分でわかる夜ほど、翌日の数値は正直に応えてくる、ということだ。

締めの糖質・遅い時間の食事が追い打ちをかける

ここに、締めが乗る。締めのラーメンや甘いデザートに含まれる糖質、とくに果糖を多く含む飲料や菓子類は、肝臓での中性脂肪の新規合成を回しやすいとされている。加えて、遅い時間の食事は食後の中性脂肪が下がりにくく、上昇した状態が長く続きやすいという研究報告もある。アルコールが材料を増やし、糖質がその材料を足し、遅い時刻が高い状態を居座らせる。晩酌と締めが重なる夜は、この2つの要因が同じ肝臓の上で同時に働いている状態と言える。


純アルコール量の数え方

「自分の飲酒量が多いのか少ないのか、正直よくわからない」──ここが、いちばんの曖昧地帯である。量を語るには、まず共通のものさしがいる。それが純アルコール量で、次の式で計算できる。

純アルコール量(g) = 摂取量(ml) × 度数(度) ÷ 100 × 0.8

主な酒類の純アルコール量早見表

酒類 目安量 度数の目安 純アルコール量
ビール 500ml(ロング缶1缶) 5度 約20g
缶チューハイ 500ml 7度 約28g
日本酒 1合(180ml) 15度 約22g
ワイン グラス2杯(200ml) 12度 約19g
ウイスキー(ハイボール) ダブル1杯(60ml) 43度 約21g

厚生労働省の飲酒ガイドラインでは、生活習慣病のリスクを高める量の目安を、男性で1日あたり純アルコール40g以上としている。上の表に当てはめると、ビールのロング缶2缶、あるいは日本酒2合程度で、この目安に届く計算になる。思っていたより手前に線がある、と感じる人もいるはずだ。ただしあくまで目安であり、健診での評価は医師にご相談を。


「適量なら安心」は本当か

「お酒は適量なら体にいい」──この話を耳にしたことがある人も多いだろう。実際、研究によっては、少量〜中等量の飲酒者で中性脂肪が低い傾向が報告される一方、それを超えると量に応じて上がっていくという関係が指摘されている。この部分だけを切り取れば、適量は味方に見える。

ところが、この「少量帯で低い」という一面だけを取り出して「飲酒は健康にいい」と結論づけるのは、正確ではない。少量の飲酒でもリスクが上がるとされる病気があることは、厚生労働省のガイドラインでも明記されている。中性脂肪という一つの数値だけを見て飲酒を勧める根拠にはならない、というのが実際のところだ。

見るべきは、安全な適量ラインがどこにあるか、ではない。大切なのは「適量ならOK」ではなく「量が増えるほど中性脂肪は上がりやすい」という量の関係そのものである。一部の研究では、飲酒量が多かった人が禁酒期間を設けたことで、中性脂肪の代謝に改善の傾向がみられたという報告もある。休肝日を設ける、量を一段階減らす。こうした見直しは、数値の変化として表れうる選択肢の一つである(対象者や条件によって結果は異なり、効果の現れ方には個人差があり、医師の評価が前提である)。


数字の見直しメモ

  • 純アルコール量の計算式:摂取量(ml) × 度数(度) ÷ 100 × 0.8
  • 生活習慣病リスクが上がる目安:男性は純アルコール40g/日以上(ビールロング缶2缶相当)
  • 一度に純アルコール50g超の摂取は一過性の急上昇につながりやすい
  • 締めの糖質・遅い時間の食事は、上がった中性脂肪を長引かせやすい
  • 見直しの一手:週2日の休肝日、または今の量から一段階減らす

よくある質問

お酒を飲むとなぜ中性脂肪が上がるのですか?

アルコールが肝臓で代謝される過程で、脂肪酸の燃焼が抑えられる一方、中性脂肪の合成とVLDL(運搬役の粒子)の分泌が増えると考えられている。飲んだ量が多いほど、この反応は大きくなりやすいとされている。

「お酒は適量なら健康にいい」というのは本当ですか?

研究によっては、少量〜中等量の飲酒者で中性脂肪が低い傾向が報告されることもあるが、少量でもリスクが上がる病気があることも指摘されており、飲酒そのものを推奨する根拠にはならない。量が増えるほど中性脂肪は上がりやすいという関係の方が重要である。

自分の飲酒量が多いかどうかはどう判断すればいいですか?

純アルコール量(摂取量ml×度数(度)÷100×0.8)で計算し、男性で1日40g以上が生活習慣病のリスクを高める目安とされている。ビールロング缶2缶程度でこの量に達する計算である。

締めのラーメンをやめれば中性脂肪はすぐ下がりますか?

締めの糖質や遅い時間の食事は中性脂肪が高い状態を長引かせる一因と考えられているが、効果の現れ方には個人差がある。生活習慣の見直しを続けても数値が改善しない場合は、他の原因がないか医師に相談することが勧められる。


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